ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理 原著第12版
バートン・マルキール 著 井手 正介 訳
株式投資の古典的名著です。
約3年ぶりに読み返しました。
●一般投資家にとっては、インデックス・ファンドの長期運用が最適解!
インデックス・ファンドは、プロのファンド・マネジャーが運用する投資信託(アクティブ・ファンド)や個別株よりも優れたパフォーマンスを生み出している
●インデックス投資の理論的基礎を普及させた著者の発言には説得力がある
●過去に発生した代表的なバブルや、群像心理についても解説しており、大変良い教訓になる
目次
目隠しをしたサル VS プロのファンド・マネジャー

ランダム・ウォークという言葉は、一般的に「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向を予測することは不可能である」という意味だそうです。
株価が短期的にどの方向に変化するかを予測するのは、難しいということだ。言い換えれば、専門の投資顧問サービスや証券アナリストの収益予想、複雑なチャートのパターン分析などを用いても、無駄だということである。

いきなりプロの投資家を一刀両断ですね…
目隠しをしたサルに新聞の相場欄めがけてダーツを投げさせて、それで選んだ銘柄でポートフォリオを組んでも、プロが注意深く選んだポートフォリオとさほど変わらぬ運用成果を上げられる、とも述べています。
さすがに極論だとは思いますが、それくらい収益予想やチャートのパターン分析は無駄のようです。
ここで、2018年にスタンダード&プアーズ社が公表した、S&P平均に関する指数とアクティブ運用されている株式投信のパフォーマンスとの比較表を見てみましょう。
1年 | 5年 | 15年 | |
S&P500平均 VS 大型株ファンド | 63.08 | 84.23 | 92.33 |
S&P 小型株600平均 VS 小型株ファンド | 47.70 | 91.17 | 95.73 |
S&P グローバル1200平均 VS グローバル・ファンド | 50.21 | 77.71 | 82.47 |
S&P IFCI平均 VS 新興市場ファンド | 64.89 | 77.78 | 94.83 |
数値はS&P平均よりも低いリターンに終わったファンドの比率(%)です。
1年ですでに半数近くがパフォーマンスで劣っていることが分かります。
また、大型株のみならず、小型株でも、国内株でも、外国株でも一貫しており、インデックス運用は本当に「賢明な」投資だと著者は述べています。
「ファンダメンタル価値学派」と「砂上の楼閣学派」
資産価値評価のアプローチには2つの学派が存在します。
投資するにあたって、どちらのアプローチになるのかをある程度知る必要があります。
Res tantum valet quantum vendi potest
(すべてのものの価値は、他人がそれに支払う値段によって決まる。)

この「砂上の楼閣」は大変危険で、バブル発生~崩壊へとつながる恐れがあります
歴史上の代表的バブル

過去に発生した代表的なバブルが紹介されています。
これらは全て「砂上の楼閣」によって引き起こされた投機ブームです。

モンゴメリー・ウォード社とRCA社は、千賀投手のお化けフォーク並みに落ちています
これらの大暴落については、市場が「身を正した」結果だと著者は述べています。
市場は時として非常に不合理な動きに支配されることがあり、金融資産価格に関するファンダメンタル価値など当てにならないと結論づけてはいけないということだ。むしろ学ぶべきは、いずれのバブルに関しても市場はやはり自ら身を正したということなのだ。
(中略)
やがては市場で「本来の価値」が認識される。これこそが読者が学ぶべき結論である。

今の株価が本当に「本来の価値」で、市場に反映されているのでしょうか?
僕には分かりません
また、仮想通貨バブルについても触れられています。
通貨に求められる機能を満たしていないということや、過去のバブルと重なる部分があり著者は否定的ですが、個人的には少額であれば投資対象として「アリ」だと思います。
「テクニカル分析」と「ファンダメンタル分析」
株価分析を行う上で、2つの手法が紹介されています。
ここまで本書を読み進めていれば、「砂上の楼閣」という言葉に拒否反応が出るようになっているはずです。
じゃあファンダメンタル分析を選べば良いのか?
こちらについても、将来性の予測は困難であり、絶対ではないと述べています。
それでもあえて銘柄を選ぶのであれば、守るべき「成功するための3つのルール」があります。
- 利益成長率が今後5年以上にわたって市場平均以上の銘柄を買うこと
- 株価がファンダメンタル価値以上になっている銘柄には手を出すな
- 投資家が「砂上の楼閣」を作れるようなストーリーが描ける銘柄を探そう

ルールに該当する銘柄を探すこと自体、かなり無理ゲーのような気がします…
プロスペクト理論
カーネマンとトヴェルスキーのプロスペクト理論が紹介されています。
カーネマンは2002年、ノーベル経済学賞を受賞しています。
カーネマンとトヴェルスキーのプロスペクト理論は、個人の投資意思決定は価値の最大化というよりは、利益あるいは損失がその人々の持つ効用に与える影響の大きさに依存すると考えた。そして金額が同じなら、通常は損失のほうが利益よりも遥かに望ましくないもの(大きなマイナスの効用)と受け止められると言う。
得たことよりも失ったことの方がショックが大きい、というのはどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
プロスペクト理論によると、2.5倍も大きいそうです。
遠からず株価が大きく回復することが見込めない銘柄の場合は、このプロスペクト理論を念頭に置いて、積極的に売ることも考えましょう。
バリュー株のススメ

市場に打ち勝つための新しい運用手法として、新たに「スマート・ベータ」と「リスク・パリティー」が解説されています。
「スマート・ベータ」の一種にバリュー株の運用があり、著者も共感しているようです。
一九三四年にベンジャミン・グレアムとデビッド・ドッドは、バリュー株投資の聖書とも言われるようになった『証券分析』を世に出した。それ以後無数のフォロワーが生まれ、その代表があのウォーレン・バフェットだ。彼らは「バリュー株」を保有していれば、最後は報われると主張する。バリュー株とはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低い銘柄のことだ。また割安かどうかを判断するのに遠い将来の予測に頼るのではなく、既にわかっているファクツ(実績値)だけに基づいて判断せよというのだ。
ファンダメンタル分析では企業の将来性を予測しましたが、バリュー株の運用では実績値を重視します。
例として、僕が所有している楽天グループ(4755)のPERとPBRをYahoo!ファイナンスの銘柄ページでチェックしてみました。
PER:—
PBR:2.12倍
PERは純利益がマイナスの赤字企業の場合、非表示になるようです。
PBRを見ると…かなり割高です。

つまり…バリュー株投資という視点では…楽天グループは買い時ではないということ…!
「リスク・パリティー」は、資産クラス全体でリスクの割合が均等になるように調整する考え方です。
例えば、株を25%、債券を75%に調整し、債券にレバレッジをかけて株式と同じリターンも求めるなど。
ただ、「「スマート・ベータ」と「リスク・パリティー」はチャレンジ運用枠であり、あくまで運用の中心は幅広く分散された、市場インデックス・ファンドであるべきだ」と著者は述べています。
財産の健康管理のためのアドバイス
すべての投資家に役立つアドバイスが10項目示されています。
ここでは個人的に覚えておきたい4項目だけ紹介します。
ドル・コスト平均法
リスク軽減する方法に、ドル・コスト平均法が紹介されています。
これは単に一定の金額を毎月もしくは毎四半期に、長期間にわたり同じ投資対象、例えばインデックス・ファンドを等額ずつ買い続ける投資方法のことである。同一金額の資金を同じインターバルで継続的に株式に投資し続けることによって、ポートフォリオの中の株式をすべて高値で取得することが避けられるため、リスクをなくせないまでも、かなり減らすことができる。
バフェットが説くドル・コスト平均法のメリット「これからハンバーガーを買いに行くのに、値上がりを歓迎するのと同じで、全く馬鹿げています。株価が上がって喜ぶのは、今から売ろうとしている投資家だけで、買い続けようとするなら下がり続けるほうを喜ぶべきなのです。」
価格変動するハンバーガーを毎月決まった日に1,000円分、3ヶ月間買い続けたとします。
- 1ヶ月目…価格100円で10個購入
- 2ヶ月目…価格200円で5個購入
- 3ヶ月目…価格50円で20個購入
その後、ハンバーガーの値段が100円に戻れば、元手3,000円に対しプラス500円の含み益になる、という仕組みです。
買う金額は決まっているので、高値(200円)では買う量を抑えてくれるのもポイントです。
インデックス・ファンドを定期的に積立購入しているということは、ドル・コスト平均法を自然と実行していることになります。
まとめ

本書では上記で書いた事項がさらに事細かく解説されていますが、結局は
「長期インデックス投資が最強」
というメッセージで首尾一貫しています。
「分析して投資するのは難しいし、面倒だし、何より危険!一攫千金はあきらめて、ドル・コスト平均法でこつこつインデックス投資しよう」と読者に印象付けることができれば、この本の目的は果たしたといえるのではないでしょうか。
僕もこれまで通り気を引き締めて、インデックス投資を中心に続けていこうと思います。

歴史上の代表的バブルの解説は、本書で一度目を通しておくのをお勧めします
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